[事業再構築補助金] 医療法人

コラムをご覧いただきありがとうございます。

2020年初頭、コロナ禍に見舞われ、行政による新型コロナウイルス感染症対応の混乱や社会不安の中、医療機関における一般診療までもが減少し、結果として経営的な悪影響が生じた医療機関が増えました。

今回は、医療法人でも事業再構築補助金を活用することができるのかについて順に解説していきます。

◆医療法人

まず原則として、医療法人は事業再構築補助金の補助対象にはなりません。

事業再構築補助金の公募要項によると、事業再構築補助金の補助対象者に含まれるには、

「中小企業等経営強化法2条1項6号〜8号に定める法人(企業組合等)または法人税法別表第二に該当する法人もしくは法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人(従業員数が300人以下である者に限る)であること」

が求められますが、医療法人はこのいずれにも該当しません。
また医療法人は、その運営に関する規定等からも明らかな通り、収益業務を行うことが想定されていません。
これらのことから、医療法人は事業再構築補助金の補助対象者に含まれないのです。

◆社会医療法人

前述の通り、医療法人は事業再構築補助金を活用することが難しいですが
社会医療法人は、事業再構築補助金の補助対象となり得ます。

社会医療法人は、医療法42条の2第1項の規定に基づき都道府県知事から認定を受けた医療法人です。
社会医療法人は、その収益を当該社会医療法人が開設する病院、診療所、介護老人保健施設または介護医療院の経営に充てることを目的として、厚生労働大臣が定めるところにより収益業務を行うことができます。

社会医療法人は法人税法別表第二に該当する法人であるため、事業再構築補助金の補助対象者に含まれます。
ただし、収益事業を行っていない場合においては補助対象となりません。

◆その他の医療機関

では、上記以外のその他の医療機関の場合は、事業再構築補助金の補助対象者となり得るのでしょうか?

1⃣「クリニック」「医院」等を営む個人開業医
いわゆる個人開業医は個人事業主であり、公募要領が補助対象者としている「中小企業者」に該当するため、事業再構築補助金の活用を検討することができます。

2⃣医療機関を経営している公益財団法人、公益社団法人、一般財団法人および一般社団法人
公益財団法人、公益社団法人、一般社団法人および一般社団法人はいずれも法人税法別表第二に該当する法人であるため、事業再構築補助金の補助対象者に含まれます。
ただし、収益事業を行っていない場合においては補助対象となりません。

3⃣大病院
大病院は、事業再構築補助金の対象となりません。
大病院とは、特定機能病院、療養型病床群を有する病院および老人病院以外の一般病院で、病床規模が500床以上の病院を指します。一般社団法人日本病院会の2019年12月18日付け「2019年度病院経営定期調査ー集計結果(概要)ー」によれば、500床以上の病院における病床100床あたりの平均職員数は218.9人で、大病院においては少なくとも千人余りもの職員が業務に携わっていることになります。
この大病院が個人事業であったとしても、特区での会社による経営であったとしても、「従業員数」の多さにより中小企業者には該当せず、事業再構築補助金の補助対象者には該当しません。

4⃣大学病院
大学病院とは、公立大学医学部等の附属病院を指し、法人の種類は地方独立行政法人です。地方独立行政法人は中小企業者には該当せず、かつ法人税法別表第二にも該当せず、法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人にも該当しません。
したがって、大学病院も事業再構築補助金の補助対象者には該当しません。

◆補助対象者としての要件

前述のように、他の業種と同じように社会医療法人も補助対象者の範囲に含まれています。
ただし、次のいずれかに該当しなければ、どの業種であれ補助対象者とはなりませんので注意してください。

【中小企業者】
中小企業者は、一定の条件を満たす会社または個人を指しますので、社会医療法人はこれに当たりません。

「中小企業者等」に含まれる「中小企業者」以外の法人】
社会医療法人は法人税法別表第二に該当する法人で、大多数の場合これに該当します。

【中堅企業等】
社会医療法人のうち、資本金が3億円を超え、または常勤従業員数が300人を超え、次の2項目に該当する場合は、非常にレアなケースではあるものの、中堅企業等として補助対象者となります。
・資本金の額または出資の総額が10億円未満
・もしくは資本金の額または出資の総額が定められていない場合は常勤従業員数が2,000人以下であるもの

◆最後に

いかがだったでしょうか。

今回の記事では、医療法人でも事業再構築補助金を活用することができるのかについて解説しました。

今後も経営に役立つ情報をお届けしますので、是非ともチェックしてみてください。